公正価値と現在価値

米国公認会計士(USCPA)試験全科目の勉強において非常に重要な公正価値と現在価値の概念について説明します。
FARのタグに分類しましたが、全科目において重要となるので、大多数の方が一番初めに勉強するであろうFAR項目に記載しました。

公正価値(Fair Value)

一言で言うと市場価格(Market Price)です。
私は証券会社にいたので理解しやすかったのですが、参考書の説明は丁寧に書いてくれているおかげで初学者にはやや分かり辛いかと思います。
では市場価格とは何でしょうか。

株式投資を例に説明します。
株式取引の未経験者の方でも「本日の日経平均の終値は・・・○○円です」といったニュースを見たことはあるかと思います。
更に言うと「○○円で買ったトヨタ自動車の株が××に値上がりして儲かったよ」といった内容も聞いたことはあるかと思います。
ではこの場合のトヨタ自動車の株式の値段、○○円とか××円って誰が決めているのでしょうか。
トヨタ自動車が決めているのでしょうか?

答えは「市場」が決めています。そしてトヨタ自動車株式が属する市場は「東証一部」という名前です。
東証一部って聞いたことはあるけど、何なのかよく分からないという方も多いかと思います。
このケースの東証一部が持つ役割は「トヨタ自動車株式を売買したい人達の為に売買する場所を提供する」事です。
え、そんなことしなくても売りたい人買いたい人が直接お互いに売買したらいいのに、と思った方はいらっしゃいますか?

その通りです。それが出来るならその方がいいです。
しかしながらトヨタ自動車株を売りたい買いたい人は世界中に何万人といます。
その人達全員が個別に納得のいく取引をする事は実質的に不可能です。
そこで「市場」が登場するわけです。

価格は「市場」が決め、参加者は「市場」が決めた価格に従うしかないのです。

市場価格を用いて市場で売買する行為のことを市場取引といいます。
そして会計の世界ではこの市場が決めた価格の事を公正価値と呼びます。

ちなみに不動産取引等、市場価格を使用せずに売りたい人買いたい人が1対1で売買することもありますよね。
この行為は相対取引といいます。
FARのオプション取引の項目で、市場取引と相対取引の違いについて登場しますので軽く覚えておいて下さい。

そして公正価値には3つのレベルがあります。

レベル1・・・(通常の)市場価格
レベル2・・・(通常の市場に準ずる)市場価格
レベル3・・・市場価格が存在しない

キーワードは「観察可能性」であり、レベル1が高く、レベル3が低いです。
具体例を記載します。

レベル1・・・東京証券取引所一部市場におけるトヨタ自動車の株価
レベル2・・・中古自動車のオークション価格、未上場株式の価格
レベル3・・・自分で描いた絵画の値段を自分で決定する。

現在価値(Present Value)

ファイナンスの勉強をされている方等にはおなじみかと思います。
初めて見た、という方、試験合格にはこの概念を使いこなす必要があるのでしっかり読んで下さい。

今日貰える1万円と、1年後に貰える1万円
どちらが欲しいでしょうか。
おそらく今日もらえる1万円を選択されるかと思います。
同じ1万円なのに不思議だ。とはならないかと思います。
本能的直感的に今日貰える1万円に魅力を感じると思います。

これこそが貨幣の時間的価値という概念であり、貨幣は手元にやってくる期間が長い程価値が目減りします。

上記の例を具体的数値にしてみましょう。
その為には割引率という数値が必要になります。
この割引率、色々なパターンがありますが最もポピュラーな数値は国債の金利です。
国債の説明はまたどこかで記載します
国債の説明を下記リンク先に記載しました。

国債とは


当記事を執筆している時に見た日本の10年国債金利の数値が0.01%だったので、簡便的に割引率とします。

現在価値の計算方法は、「○○年後に貰える金額」を、「○○年後を乗じた1+割引率」で割ります。
式にするとこうなります。

10,000/(1+0.01%)^1 = 9,999.000099990001円

今日貰える1万円と、1年後に貰える1万円は
今日貰える1万円】と【「現在9,999円の価値がある」1年後に1万円が貰える「権利」】との比較であるということですね。

慣れるまでは式を覚えるのも大変かもしれませんが、問題を解きまくって慣れましょう。
FARでもよく出ますし、BECのファイナンス論ではとても重要になります。
ちなみに米国公認会計士(USCPA)試験では割引率は与えられます。
(たまに自分で割引率を計算しなくてはならない場合や選択しなければならない場合もありますが特に気にされなくて良いと思います)

私が利用していた予備校の教科書には現在価値に加えて、将来価値という概念も説明されています。
しかし、個人的には将来価値の勉強は不要だと思うので割愛します。

私の受験した回に将来価値が登場しなかった事が理由の一つです。

加えて、この米国公認会計士(USCPA)資格を取得する方の(現地での)大多数は監査法人に所属して会計監査に従事します。
そして会計士・監査とはで説明した通り、会計監査とは「会社の営業成績開示書類に対して意見を言う事」であり、営業成績開示の時点は「期末日」時点です。

つまり様々な価値に対して「期末日時点ではいくらの価値があるか」が重要であり、将来価値のような「期末日時点で○○円の価値があるものの将来(例えば5年後)の価値はいくらか」等という状況はまず発生しません。

従って今後も米国公認会計士(USCPA)試験において将来価値の概念が頻出する事はまず考えられません。BECの予備校の練習問題で一度見かけたぐらいです。

ではまとめておきます。

まとめ

・公正価値=期末日時点の市場価格

・財務諸表(営業成績開示書類)に記載される金額のほとんどは公正価値で記載される。絶対ではないのはレベル3インプット(市場が存在しないもの)があるため。

・試験勉強においてはfair valueの略称でFVと表記する事が多い。

・現在価値は、将来時点の金額が判っている時に、「今現在いくらの価値であるのか」を計算するための概念。

・将来時点の金額と割引率が必要になる。

・試験勉強においてはpresent valueの略称でPVと表記する事が多い。

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