企業が一度設定した会計方針を変更する場合、
具体的にはどのような流れになるでしょうか。
AUDの試験等にも頻出の分野です。
まとめるとシンプルなのでこのページでまとめました。
目次
会計方針の変更の分類
会計方針の変更に絡む論点は、大きく以下3点に分類できます。
①会計見積りの変更(changes in accounting estimates)
②会計原則の変更(changes in accounting principles)
③誤謬の訂正(error corrections)
私の経験上、①と②は機械的に暗記しまうのが楽でした。
まずは私が念仏のように唱えていた暗記法を書きます。
残存、減償、引当金Pros
連結、工事、棚卸Retro
理解が進み辛い方はこれを唱えまくって暗記しましょう。
簡潔に解説します。
①の見積りの変更とは、イメージとしては軽い変更です。
試験によく出る対象ですと、
「有形固定資産の残存価額」「有形固定資産の減価償却費関連」「製品保証引当金の見積り変更」等が当てはまります。
軽い変更なので、会計処理も簡単で構いません。
変更時点からの会計処理の変更でOKです。
影響はProspective(将来の)です。
②の原則の変更とは、イメージとしては重い変更です。
試験によく出る対象ですと、
「連結子会社に絡む変更」「長期工事契約の会計処理の変更」「棚卸資産に絡む変更」等が当てはまります。
重い変更なので、会計処理も重いです。
変更時点より前の期に対して会計処理の修正が必要になります。
影響はRetrospective(遡及的な)です。
原則の変更はとても重いので、米国の会計基準(USGAAP)にも手筈が定められています。
ポイントは以下2点です。
●新しい会計基準によって要求されている。
●会計原則の変更が望ましいものであると正当化出来る。
試験問題でUSGAAP上の会計原則の条件を問う問題が出た時はこの2点に近い選択肢が正解である事が多いです。
冒頭の呪文は、「見積りか原則か」「ProspectiveかRetrospectiveか」を認識するためのものです。
残存、減償、引当金Pros
連結、工事、棚卸Retro
ブツブツつぶやきながら問題を解いていくと覚えられると思います。
遡及時の会計処理
「会計原則の変更」と「誤謬の訂正」は共通した会計処理になります。
ポイントは「直接Retained Earningsを調整する」事です。
例えば、今期の財務諸表作成中に前期の誤りを見つけ、前期分の費用を追加して今期に費用計上してしまうと、、、
最終的な財務諸表で数字を見た人は
「え!?この会社、今期にこんなに費用が発生しているの?」
と勘違いしてしまうからです。
そうならない為に、費用や収益で仕訳を切らずに直接Retained Earningsを調整する必要があります。
簡単な例題を通して確認しておきましょう。
【例題】
当期の財務諸表作成中、前期の棚卸資産が10ドル分過大計上されている事に気付き、修正仕訳を切った。
まず問題文の前期の修正仕訳に取り掛かる前に、
当期の修正仕訳だとどうなるか見ておきましょう。
なお、ここでは慣れの為に当期を見るだけなので、
問題を解くときは最初から前期の修正仕訳に取り掛かって頂いて問題ないです。
過大計上されている棚卸資産を10ドル分減らす必要があります。
まずはクレジット棚卸資産10ドルとなりますね。
そして期末在庫が減る分、売上原価が増加します。
これはSIDEボックスを作成してみると分かりやすいです。
E部分が減り、貸借一致の原則からD+Eは一定なので、Dが増加する
という流れです。
従ってデビットは売上原価10ドルです。
Dr. Cost of Goods Sales(CGS) 10 / Cr. Inventory 10
勉強当時の私は棚卸資産が減るのは理解出来ましたが、
何故売上原価が増加するのかの理解に時間が掛かりました。
この棚卸資産と売上原価に絡む問題はBECやAUDでもよく出ます。
理解がいまいちな方は是非、下記リンク先をご参照ください。
問題に戻ります。
前期の修正は当期の場合の仕訳が書ければ簡単です。
先程の「Dr. CGS 10 / Cr. Inventory 10」の仕訳は、
「費用10 / 資産10 」の仕訳です。
前期の修正は
費用・収益科目をRetained Earningsに変える
これだけです。
従って正解は
Dr. Retained Earnings 10 / Cr. Inventory 10
となります。
会計原則の変更と誤謬の訂正は
・しっかりと仕訳を切れる。
・費用・収益科目をRetained Earningsに変える。
これだけでこの問題は得点源になります。