AUD試験の根幹を成す「統制テスト」と「実証性テスト」
試験のポイントとしても頻出であるこの2つ、個人的には特に統制テストに絡む内部統制関連の理解が非常に曖昧でした。
監査実務を通じてしっかりと理解できたので、統制テスト関連のつまずきやすいポイントを総論形式で記載します。
内部統制
内部統制についての詳細な話は別のページで記載します。
ここでは内部統制の理解に役立つ全体の流れについてまとめます。
内部統制の監査手続は、「内部統制の整備評価」「内部統制の運用評価」の2つに分かれます。
まず、最重要なのは内部統制の整備評価です。
内部統制の運用評価はあくまでも結果論です。
①内部統制の整備がちゃんと出来ています。②じゃその整備って本当に機能しているのでしょうか。③確かめるために運用評価をしてチェックしてみましょう。
という流れです。
整備評価(ウォークスルー)と運用評価(統制テスト)
試験で内部統制の不備を確かめるにはどうしたらよいかという選択肢がよく出ます。
こういった問題の正解は「内部統制の整備評価」を確かめる、になります。
当時は「整備されていても、結果的に運用がめちゃくちゃなら内部統制はダメだから、運用評価の方が重要なのかな」と誤認してました。逆に言うと当時の予備校の授業では、そこまで深い例題と解説はなかったのです。
運用評価はあくまでも整備がきちんとしているかどうかの結果論と考えて下さい。
実務では当然、何年も外部会計監査人による監査を受けている会社ばかりなのできちんとした会社が99%です。
内部統制の3点セットと呼ばれる、「(process)narrative、RCM、フローチャート」も完璧に作成されています。
しかし試験問題は分かりやすく職務分掌が出来ていないというケースがよく出ます。
そもそもの内部統制がきちんと整備されている事を見たうえで、「じゃ念のためにサンプルを複数件抽出して本当に効果的な運用がなされているか確かめておきましょうね」というのが運用評価=統制テストです。
私の受験時代は、整備評価は「inquiry, observation, inspection, walkthrough」であると理解していました。
しかし、効率の良い理解のためには「整備評価=walkthrough」と覚えてください。
walkthrough手続内に「inquiry, observation, inspection」が含まれているからです。
「整備評価=ウォークスルー」「運用評価=統制テスト」
この理解を覚えてください。
監査意見から遡る監査手続
AUDの学習中には以下の会話の流れをざっと理解すると効率が格段に上がります。
監査人さん、無限定意見出してるけどその根拠って何ですか。
監査意見の根拠は実証性テストでアサーションが立証された事に依ります。
実証性テストって本当にちゃんとやってるんですか。
はい、実証性テストは会社の内部統制を考慮して適切な件数と内容をテストしました。
内部統制ってどうやって確かめたんですか。
リスク評価手続の一つである、ウォークスルー(walkthrough)手続により内部統制の整備状況に問題がないことを確かめ、統制テストを実施して内部統制の運用状況を評価しました。
リスク評価手続におけるリスク評価はいつ、どのように定まったのですか。
当期の監査計画立案の際に、会社のビジネスモデルや経済のマクロ要因、会社業績等のミクロ要因、等々の様々な要因を考慮し、監査人としての職業的専門家の判断(professional judgement)を以てリスク評価を実施しました。
上記やり取りのうち右側の監査人の台詞を下から上に読むと、計画立案から意見表明までの監査の一連の流れが理解できます。
内部統制の流れのまとめ
このページの内容についてQ&A方式で(わかりやすく)まとめます。
内部統制ってなに?何のために監査手続きを実施するの?
内部統制とは不正に対する組織の自浄作用のことである。
自浄作用のレベルによって、監査の根幹である実証性テストの件数や手続内容が変化する。
自浄作用レベルの高い組織ならテスト件数は少なくても監査意見を出せます。
自浄作用レベルの低い組織(横領や経理不正が頻発している)なら非常に多くのテスト件数を実施したり中身の濃い手続を実施しないと監査意見が出せません。
内部統制の整備評価と運用評価ってなに?
監査人が監査対象の内部統制をチェックする際には、内部統制が「①導入されているか」「②機能しているか」という2点を見る。
①導入されているかを確かめる手続きが整備評価、②機能しているかを確かめる手続きが運用評価
整備評価と運用評価の関係や重要性はどうなっているの?
住宅に例えるなら、整備評価は土台や基礎の部分、運用評価は建物部分といえる。
どちらも重要だがあえて優劣を付けるなら土台や基礎の部分である整備評価が重要となる。
ウォークスルー(walkthrough)と統制テスト(test of control)ってなに?
試験対策上、整備評価時の手続きがウォークスルー、運用評価時の手続きが統制テストである。
また、学習中ややこしくなる論点としてウォークスルー+統制テスト=(広義の)統制テストと呼ぶことがある。これはどちらも内部統制の内容を確かめる手続きである事に起因する。
予備校資料やWileyや模擬試験等では広義の統制テストについて言及している書籍はほとんどない為理解が弱い人は特に注意する点である。