順当に学習を進めてきた方にとって純資産会計はFAR中盤といったところでしょうか。
純資産会計は地味に難所です。試験でも頻出です。
難所の理由は、日々の生活に関わりにくい分野なので初学時にイメージが持ちにくいからです。
ただ、米国公認会計士(USCPA)の純資産会計は、非常にシンプルにまとまっています。
慣れるまでは難しいかもしれませんが、理解さえすれば後は楽です。
試験頻出分野なので、しっかり理解して他の受験生と差をつけましょう。
株式発行(現金)
上場企業をイメージして下さい。
上場企業が株式を発行する理由は何でしょうか。資金調達の為ですね。
銀行等に借りたお金は負債なので返済義務がありますが、株式発行によって調達した資金は自己資本なので返済義務がありません。
まずは上記の通り、企業が株式発行をする理由を抑えておきましょう。
そのうえで実際に株式を発行する時の説明に移ります。
米国公認会計士(USCPA)試験に登場する株式発行は必ずパターンが決まっており、
覚えなくて問題ないですが、試験上の特殊状況である事を知っておいて下さい。
では仕訳を交えて解説します。
わかりやすくするため、数字を含めた例題形式で紹介します。
KK社は額面$10の株式を100株発行した。発行時の株式の時価は$15であった。
この条件での株式発行の仕訳を書きなさい。
正解
株式発行によって入手する現金は$15×100株で$1,500です。
そのうち、額面金額(par value)に対応する分($10×100株)がcommon stock(普通株式)となります。
左右の差額、もしくは時価と額面の差額($15ー$10)×100株=$500がadditional paid in capital(追加払込資本)となります。
additional paid in capital は頭文字を取ってAPICと略される事が多いです。
額面分がcommon stock、時価と額面の差額がadditional paid in capitalとなります。
株式発行により株式(純資産)が発生し、発行=投資家に引き受けてもらう事で企業は対価として現金(資産)を受領します。
したがって上記の仕訳のように、「資産/純資産」の形式になります。
株式発行(現物出資)
現金での株式発行が理解できていれば簡単です。
現物であろうが、会計上は金額を認識して帳簿に記入します。
具体的には現金の代わりに資産や役務提供を代価として株式発行がなされる場合です。
ちなみに、問題文中で「株式時価」「資産時価」「役務提供時価」等複数登場する場合、最も優先されるのは「株式時価」です。
KK社は額面$10の株式を100株発行した。発行時の株式の時価は$15であった。株式発行に際して、KK社は現金の代わりに時価$2,000の資産(assets)を受領した。
この条件での株式発行の仕訳を書きなさい。
正解
株式の時価が優先されるので、受け入れた資産(assets)は$15×100株=$1,500で計上されます。
普通株式以外の発行、組み合わせ発行
今まで話に登場した株式は、正確には普通株式と呼ばれる種類の株式です。
普通株式以外にも様々な種類の株式が存在します。
米国公認会計士(USCPA)試験に登場する重要なその他は優先株式(preferred stock)です。
優先株式は、普通株式よりも優先的に配当を受け取る権利や会社清算時に普通株主に優先して残余財産を回収できる権利が付与されています。
普通株式(commmon stock)は略してCS、優先株式(preferred stock)は略してPSと略される事が多いです。
優先株式だけの発行は、今まで見てきた流れと全く同じです。勘定科目名がCSになっていた箇所をPSという表記に変えるだけです。
試験で問われるのは普通株式と優先株式が同時に発行されるケースです。
株式発行の入金に対して、CS分とPS分に分けて記載する必要があります。
分け方には2種類あり、それぞれの発行時価総額で按分する比例配分法(proportional method)と、片方の時価総額しか判らない場合には時価が判明している方の総額で計上し、差額をもう片方に配分する増分法(incremental method)という方法が存在します。
例題を通して見ておきましょう。
KK社は額面$5の普通株式(CS)を50株、額面$10の優先株式(PS)を100株、合計$2,500で組み合わせ発行した。
①それぞれの時価を普通株式$10、優先株式$20とした場合、比例配分法の会計処理を記載しなさい
②普通株式の時価が$15、優先株式の時価が不明な場合、増分法の会計処理を記載しなさい
比例配分法
まずそれぞれの発行時価総額を確認しましょう
普通株式:$10×50株=$500
優先株式:$20×100株=$2,000
発行時価総額で比を計算するので数値は額面ではなく時価を使用します。
上記計算よりCS:PSが1:4と判明しました。この比を入金額$2,500に当てはめます。
普通株式:$2,500×1/5=$500
優先株式:$2,500×4/5=$2,000
仕訳はこのようになります。
APICの金額は入金額と額面金額の差額です。
APICは「CSのAPIC」と「PSのAPIC」が存在し、分けて記録されるという点にご留意ください。
試験ではAPIC(CS)の金額を答えよ、とか全APICの合計金額を答えよ、といった出題もよく登場します。
増分法
入金額から判明している方の時価を引いてもう片方の配分金額を計算します。
入金額:$2,500
普通株式時価総額:$15×50株=$750
優先株式時価総額:$2,500-$750=$1,750
仕訳はこのようになります。
APICの金額は入金額と額面金額の差額です。
この例題では数字が違うので当然なのですが、比例配分法とはクレジット側の各勘定科目の数値が違ってきます。
試験での登場も、必ず比例配分法と増分法でクレジット側の各勘定科目の数値が変わるように出題されます。
両者の違いを理解していないと得点できないので解放をマスターしておきましょう。
株式引受申込
ここまでは、投資家からの現金受領と同時に株式を発行するパターンを見てきました。
実際には先に現金を預かり、諸条件が満たされた後に株式発行をするというパターンがあります。試験にも登場します。
その際の仕訳を確認しておきましょう。
引受申込時点
今まで違い、subscribeという単語が含まれた勘定科目が登場します。
subscribeは日本でも日常的に「サブスク」という言葉があるように、「予約」という意味です。
未入金分を「subscriptions receivable」という仮勘定でデビット側に記載する事で、一旦仮の資産として計上しますよ、という内容を表しています。
仮なので本来の要件が達成されれば、本勘定へと振り替わります。
クレジット側の「common stock subscribed」も仮勘定です。未入金分は「common stock」ではないので、入金されるまでは仮勘定で純資産計上しています。
残金が入金された時点
デビット側にcashを記載する事で未入金分が入ってきた事を表しています。
そして一旦仮で計上していたsubscribeも役目を果たしたので、それぞれ引受申込時点で計上した側と反対に記載し逆仕訳を切る事で消してあげます。
最後に入金と共にcommon stockが計上されるので、純資産の元のポジションであるクレジット側にcommon stockを計上して完了となります。
株式発行についてはここまでの内容で完了です。
本番では多種多様に様々な論点で絡んでくるので、問題を解きまくって慣れましょう。