社債の基本

FAR

社債と聞いてピンと来る方は多くないかと思います。

しかしながらどの会計参考書も一般常識のように扱い、会計処理ばかり深追いしています。

私は証券会社勤務だったので社債に関しては他人より博識だと思っていましたが、恥ずかしながら後に登場する実効金利法に関して初回は全く理解できませんでした。

そこで、どのサイトや参考書でも(ほとんど)扱っていない社債の基本からわかりやすく記載します。


目次

  1. 社債(会社債券)
  2. 企業から見た社債と株式の相違点
  3. 3つの利率
  4. 市場利率について

1.社債(会社債券)

社債とは企業が資金調達をしたい時に発行する金融商品です。

企業の資金調達として一般的でイメージしやすい「銀行からの借入」と「株式の発行」は世間に浸透しているかと思います。

しかしながら銀行借入と株式発行と並んで「社債発行」も実務的によく実施されています。

「社債」には満期があり、保有している投資家には満期まで利息を受け取る権利があります。

そして満期日には発行時に企業に提供した代金を回収できます。
(正確には額面金額代金を回収できますが、初めはややこしいので上記のように覚えて問題ないです)

例えば5年満期100万円の社債が発行された場合、企業は社債を購入してくれた投資家に「社債」を渡します。

社債を購入した投資家は企業に「100万円」を渡します。

投資家は5年後の満期日までの利息支払日に社債発行企業から、発行時に定められた条件で利息を受け取ることが出来ます。
通常は半年毎、年2回の支払となっている事が多いです。

そして5年後の満期日に、社債発行企業から当初払込金額が支払われ、社債は満期償還を迎えます。

2.企業から見た社債と株式の相違点



「銀行からの借入」はまだしも、金融商品の発行による資金調達が何故、株式と社債の2種類があるのでしょうか。

それは様々な相違点があり、企業は2種類を使いこなす事で利潤追求を効率良く実施する事が出来るからです。

満期の概念・・・社債には満期日があり、企業が経済的に困窮していない限り満期日に借りた資金を債権者に返済する義務があります。
一方で株式に関しては、株式保有者への返済期日も返済義務もありません。

勘定科目・・・企業にとって社債は負債であり、株式は純資産です。
デットエクイティ比率等の財務数値に影響が出てきます。

投資家への支払・・・企業にとって「社債の場合は利息」「株式の場合は配当」を支払う必要があります。
(試験上の話です。実務ではゼロもよくあります)

社債の利息は営業外費用となり、当期純利益に影響が出ます。
株式の配当は利益剰余金(Retained Earnings)から直接控除するので当期純利益には影響を与えません。

企業倒産時・・・企業が財務危機等で倒産した際の扱いについて、
株式への投資家には基本的に資金は返ってきません。
社債への投資家には元本の一部が返ってくるケースが多いです。


3.3つの利率

上記で「発行時に定められた条件で利息を受け取る事が出来る」と記載しました。

この利息を表面利率といい、表面利率に関わる3つの利率が存在します。

表面利率・・・投資家が貰え、発行企業が支払う必要がある金利です。


実行利率・・・社債価格と表面利率を考慮した、実質的な利回りを算出する為の利率です。試験上、最も重要になります。

市場利率・・・世間一般の利率です。リスクゼロで得られる利率であり、投資家はこの利率と購入予定の社債利率を比較し、購入の意思決定をします。



最も重要な実行利率について補足です。
社債価格と表面利率を考慮した、と記載しました。
社債は金融商品です。社債は発行から満期まで価格が変動します。
実務では証券会社等を通して発行済の社債を売買する事が出来ます。

簡単な例題を通して確認しましょう。


【例題】
①毎年の利息が3万円、発行価格100万円でKK株式会社が社債を発行した。
満期は5年であり、利息の支払は毎年3月31日、年1回である。
この社債の表面利率を求めなさい。

30,000/1,000,000=0.03=3%

②発行から1年後、投資家A氏が当該発行済社債を95万円で購入した。A氏が当該社債を1年間所有後、購入時価格と同じ95万円で売却する場合、この1年間の実行利率を求めなさい。

30,000/950,000=0.03157…=3.16%

②の式を深く追及すると米国公認会計士試験範囲外になりますので、簡略化しております。
ちなみに上記は理解促進の為、投資家目線で記載しました。
試験の主役は発行企業側の目線となる事が多いです。


ポイントとしては、

①表面利率3%と②実行利率3.16%、両者に差が出るという事を覚えてください。

4.市場利率について

市場利率はリスクゼロで得られる利率と記載しました。
試験では市場利率=国債の利率と覚えて下さい。

国債とは

国債とは社債の国家バージョンです。
国庫債券の略称です。

今までの説明の通り国が発行する債券であり、定められた利率と満期が存在します。

何故リスクゼロなのか。

それは国家の経済的破綻を前提としていないからです。

要は会社が倒産する事があっても、国は倒産しないという前提があるという事です。

(あくまで学問上の設定です。現実世界ではアルゼンチン国債等経済的破綻を経験している国もあります)

簡単な例として、
国債利率が3%、KK株式会社の社債利率が1%だとします。
投資をするならどちらの債権を購入したいでしょうか。

私ならリスクゼロで社債より2%多くの金利を貰える国債に魅力を感じます。

別のケースを考えてみましょう。
国債利率が3%、KK株式会社の社債利率が8%だとします。

その他の条件にもよりますが、多少のリスクがあっても5%多くの金利を貰える社債に魅力を感じる投資家も出てくる可能性があります。

このように市場利率=国債の金利は投資家の意思決定に影響を与えます

そして発行される社債の価格にも影響を与えます
この話はまた別のページで説明します。