この記事を投稿する頃に、ようやく2020年12月期の繁忙期が落ち着きました。
2021年4月からはまた2021年3月期決算の繁忙期が始まりますが…
当サイトを見て下さる方の中には監査法人勤務に興味がある方も多いと思うので、実体験を記載します。2020年12月期時点は以下記載のようなスケジュールでした。
残業時間
まずは単純な残業時間です。
- 11月:48時間
- 12月:81時間
- 1月:101時間
- 2月:108時間
月平均84.5時間です。
あくまでも申請残業時間ですので、実労働時間はもう少し多いです。
繁忙期月84.5時間はどれくらいの水準か
正確ではありませんが、入社2年目スタッフの残業時間としては多い方です。
大多数の入社2年目スタッフはここまで働く事は少ないかと思います。
インチャージ(主査)を担当するシニアスタッフならこれぐらいが平均的な水準かと思います。
入社2年目スタッフが月84.5時間残業となった特殊要因
①インチャージ(主査)の直前離脱
これが一番の原因です。
私は12月期決算に4社入っていたのですが、うち2社のインチャージが期末監査直前に離脱しました。
大変迷惑な話であり、大半の社会人ならそうした行動は取らないと思いますが、病気や事故に巻き込まれる事は誰にでもありますので、自分もしくは自分の周囲で起こりうる可能性を考慮しておいた方がいいと思います。
繫忙期に向けてほぼ全員が既にどこかしらの現場に配属されているので余剰人員はおらず、結局1人抜けた穴埋めを残されたチームメンバー全員で割り振りました。
そして2社ともインチャージ担当事項の大半を私が担当する事になりました。。
②年々厳格になる監査基準
不正会計がこの世から無くならない限り、監査の基準や実務は年々厳格化されます。
この近年で言うとやはり見積りの要素が絡む項目は手続きが増加し続けていますし、まだまだ増加すると思います。
貸倒引当金や製品保証引当金のように、実際の数字が基になって計算されている見積り項目はまだいいです。
退職給付引当金を自社で計算していたり(実務上はプロの年金数理人に外部委託する事が多いです)、工事進行基準の見積り総原価、賞与引当金、自社オリジナル引当金は・・・
マネージャーやパートナーを納得させるまでの道のりは果てしないです。
特に不正が絡みやすい売上項目が基となって計算される工事進行基準の見積り総原価はキツイです。
私が受験したころはU.S.GAAPでも工事進行基準は存在していたのでFARの試験範囲に含まれていましたが、2021年3月現在、もう試験では工事完成基準しか試験範囲に含まれていません。
改めて試験合格と会計実務には差異があるのだなと感じました。
この経験から考えるメリットとデメリット
メリット
- 仕事が好きで、めっちゃ仕事したい人にとっては天国
- AIに奪われる気がしません。前職の証券営業の方がよっぽどAIに奪われそうです。
デメリット
- ライフワークバランスはない。フルで丸1日休めたのは2021年1月1日のみ
AIの下りは興味がある人も多いと思うので補足します。
監査の大半は機械的なルーチンが多く、確かにそうした部分はAIに奪われます。
というか奪ってください。。
現在でも私の所属する法人ではルーチン作業は会計士ではなく、派遣社員の方がやって下さる事が大半です。
しかし、ルーチン作業でも世間的なコロナ禍により従来とは違った状況になる事が多いので最終的な判断や仕上げ段階では結局会計士試験合格者であるスタッフが実施します。
そして監査法人勤務の会計士の存在価値の大半は、不正リスクに関連する項目の各種判断です。
不正行為を働こうとする企業側から見ると、「会計士がどこを見てくるのか、どういった手続きをするのか読めない」状態が最も恐ろしいので、ここをシステム化するリスクを監査法人は取れないと思います。システムがハッキングされ手続きに関する情報が外部流出したらアウトです。
したがって「手続きに関する情報流出リスクが防げる合理的な水準持つAI」かつ「そのAIを監査法人が業務で使用できる程度に安価に供給される」までは会計士の仕事は奪われません。
それ以前に本来、現在AIで出来るはずの仕事がコロナ影響により出来なくなり、結局人間(会計士)が手動で実施する状況を改善してください。。それだけで恐らく残業時間は半減します。
最後に
ちらっと見た転職サイトで、私が所属する監査法人全体の月平均残業時間は40時間との記載がありました。
大半の方は監査法人への転職=監査(アドバイザリー)を実施すると思いますので、内勤部署も含めた月平均残業40時間は怪しいです。
私の場合4月5月の繁忙期も考慮して、閑散期でも残業0時間の月は存在しない事を考慮すると、年間月平均残業時間は少なく見積もって50時間~60時間くらいでしょうか。
これを多いと見るか、少ないと見るか、適切と見るか。
監査法人への転職を検討する方は参考にして下さい。