個人税概論①-Gross Income:除外項目

REG

REGの主軸である税法、税法の土台である個人税を見ていきましょう。

税金金額はGross Incomeからスタートし、様々な控除項目を経て算出されたTaxable IncomeにTax rateを掛ける事で計算できます。

Gross Incomeは日本語で総所得と訳されるだけあり、基本的には収入の全てが対象になります。

試験では例外項目であるGross Incomeに含まれない所得と、含まれるが少し特殊な所得に分けて確認しましょう。

このページでは除外項目について記載しています。

スポンサーリンク

Gross Incomeに含まれない所得

換言すると、「所得税が非課税となる所得」となります。

まずは一覧を記載します。これを丸暗記出来る事がベストですが、順次解説を補足します。

・未成年者養育手当(minor child support)
・離婚時の財産分与(property settlement)
・贈与、遺贈、相続(gifts, bequests, inheritances)
・年金のうち自身の負担金額分(annuities and pensions)
・生命保険受取金(life insurance proceeds)
・事故や病気による保険料(accident and health insurance benefits)
・身体傷害による損害賠償金(damages for physical injury or physical sickness)
・雇用者が支払う従業員の福利厚生(certain employee benefits)
・株式配当(stock dividend)
・条件を満たした受取利息(certain interest income)
・学資貯蓄目的の受取利息(interest income on savings bonds for higher education)
・奨学金(scholarships and fellowships)
・政治献金(political contributions)
・牧師館の賃借料(rental value of parsonage)
・賃借物件の改良(cost of leasehold improvements made by a lease)
 

初見時は「うっ」と身構える分量です。頑張りましょう。

未成年者養育手当(minor child support)

離婚した夫婦のうち、独り身の方が親権者に養育費として支払うお金です。

日本でも一般的ですね。

ここに税金をかける事は誰しも「え、それはどうなの?」と思うでしょう。

したがって、税金は発生しません。

ただし条件が2点あり、

・支払者は当該子供の親であること
・別居時の判決により金額が明確であること

ですが、ここの条件まで細かく問う問題や、条件が満たされていない状況での出題はありません。

離婚時の財産分与(property settlement)

これも日本的ですね。そこに税金かけるってどうなの?という事です。

さらに言うと、未成年者養育手当も財産分与もそもそも離婚していない状況でしたら当然に非課税です。離婚したからと言って課税されるのはおかしいでしょう、という流れでご理解ください。

贈与、遺贈、相続(gifts, bequests, inheritances)

これはちょっとひっかかるのですが、それぞれ贈与税・相続税の対象となるので所得税は非課税です、という理屈です。結局、課税自体は実施されるので間違えないように気を付けて下さい。

年金のうち自身の負担金額分(annuities and pensions)

税法には資本不課税の原則(recovery of capital doctrine)があり、「手元に入ってきた金額のうち、自分が出資した金額までは課税しない」ことが通例です。

元々自分が持っていた資金はすでに課税された結果なので、その分までは課税しない事は当然です。

そうしないと二重課税になってしまいます。

資本不課税の原則は、税法全体でよく登場します

したがって年金も自分が払った金額と、貰える総額を比較して比率を計算し、

1年間貰える金額に比率をかけて非課税分を計算します。

生命保険受取金(life insurance proceeds)

これは頻出です。死亡時受取金は非課税と覚えましょう。

会計上と税法上の相違点ではあまりにも有名です。税法では課税されません。

性格を考えると、大体が夫婦間や親子間での設定が多いかと思います。

万一配偶者や親が死亡となると残された家族のこれからの生活は大変です。そんな家族に対しての死亡保険金に課税するってどうなの?という事ですね。

事故や病気による保険金(accident and health insurance benefits)

これも生命保険死亡時保険金と同様の性格です。

大体は自分の為に保険をかけます。事故に巻き込まれてしばらく働けなくなった、その間の収入が不安だなぁ、という人に支払われる保険金

その保険金に課税するってどうなの?ということですね。課税されません。

ちなみに保険料(premium)は契約者が保険会社に払うお金保険金(proceeds)は有事の際に保険会社から被保険者に支払われるお金です。曖昧な方は整理しておきましょう。

身体傷害による損害賠償金(damages for physical injury or physical sickness)

上記の事故に巻き込まれて働けなくなってその間の収入どうしよう、という状況では事故を起こした相手からも損害賠償金を払ってもらえるケースが多いです。

ここではその事故を起こした相手から支払われるお金が非課税という事を意味しています。

状況としては今まで同様、困った人に対してのお金に課税するってどうなの?ということです。

雇用者が支払う従業員の福利厚生(certain employee benefits)

会社勤めの方でしたら福利厚生は身近でしょう。

家賃補助、通勤費補助、リゾート施設利用、スポーツジムや託児所の使用などなど

本来的にはサービスの享受を受けられるわけですから所得になるはずですが、試験上ではこれら福利厚生は基本的に非課税です

種類が多いので、よく出る数値が絡む福利厚生を紹介します。

全部覚えなくても試験には合格出来ますが、どうしても全部覚えたい方は専門の参考書でご確認ください。

①雇用者が支払う団体生命保険の保険料(group-term life insurance premiums paid by employer)

会社が払ってくれる生命保険料は、一時金$50,000までの保険の場合、保険料分は非課税になります。

$50,000を超える一時金の場合は超えた分の保険料がGross Incomeに算入されます。

②雇用者が提供する教育訓練(benefits for payment of tuition, derived from an employer)

年間$5,250までは非課税です。

③雇用者が提供する保育料援助

(1)子供の年齢が13歳未満である事
(2)年間$5,000まで

2点を満たせば非課税です。

株式配当(stock dividend)

現金配当(cash dividend)と間違えやすいので注意してください!

配当というとどうしても現金をイメージしがちですが、株式配当は保有株式に対して追加的に株式を配当として配布する事です。

日本株ではほぼありえないので、日本人にはイメージしづらいですが、アジア欧米の諸外国では株式配当は割と一般的です。

全株主が保有比率に応じて追加の株式を受領するので、配布前後で株式保有比率は変わりません

比率が変わらないという事は、会社は支配するだの関連会社になるだのといったイベントは発生しません

つまり実態としては何もなかったことと同義です何もないのですから課税も発生しません

逆に言うと、全株主が株式配当を受けず、一部の株主だけが株式配当を受ける場合は課税されます

優先株に対する株式配当が発生する場合や、株式以外の配当を受領する株主が存在する場合が課税されるパターンになります。

ポイントは「全株主が株式配当を受領する場合」に株式配当が非課税になります。

条件を満たした受取利息(certain interest income)

これは超重要です!!

米国の州や郡が発行した債券、地方債(municipal bonds)からの利息は非課税です!

対比でよく出てくる政府が発行した債券の利息は課税対象です

学資貯蓄目的の貯蓄債券からの受取利息(interest income on savings bonds for higher education)

試験に登場する貯蓄債券はシリーズEE貯蓄債券(series EE U.S. savings bonds)という名称で以下の条件を満たすことで債券からの受取利息が非課税になります。

①1989年12月13日以降の発行債券で、購入者が24歳以上
②購入者=所有者=納税者又はその配偶者のGross Incomeからの控除となる場合
③債券償還金額が納税者か配偶者か扶養家族の進学の為に使用されること

色々ありますが、ここを細かく問われる事はありません。

試験に登場するシリーズEE債券≒利息非課税との認識で問題ないです。

奨学金(scholarships and fellowships)

勉強目的に関連する奨学金は非課税です(学位取得目的や授業料、教科書代に充てられている)

逆に、家賃・食事代・授業や研究の役務提供に対する見返りとして充てられる奨学金は課税対象です。

政治献金(political contributions)

受け取った政治献金は全額非課税です。

試験ではあまり出ません。

牧師館の賃借料(rental value of parsonage)

牧師の住居賃借料を教会が負担しても、牧師のGross Incomeには算入されません。

試験ではあまり出ません。

賃借物件の改良(cost of leasehold improvements made by a lease)

賃借人が借りている物件に改良を加えて資産価値が増加しても賃貸人はGross Incomeに算入する必要はありません。

ただし、賃借人が家賃の代わりとして物件に改良を施した場合には、賃貸人は価値増加分をGross Incomeに算入する必要があります。

要は通常の物件改良は借りている人が自分の為に実施したので貸している人の収入とはみなしませんが、貸している人にとって家賃としての受領は通常収入なので課税しますという事です。

まとめ:このページ内の重要なポイント

試験対策上、重要なポイントをまとめておきます。
初学者はまず以下のまとめを覚える事を目指してください。

・資本不課税の原則(recovery of capital doctrine)
出資分を回収するまでの収入は非課税

・生命保険の死亡時受取金は全額非課税

・保険料(premium)は、契約者が保険会社に払うお金(一時金、毎月、毎年等)
保険金(proceeds)は、有事の際に保険会社が被保険者に払うお金(死亡時、傷病時等)

・勤務先企業からの福利厚生は基本的に非課税

・雇用者が払ってくれる団体生命保険の保険料、一時金$50,000分までは非課税

・雇用者が払ってくれる教育訓練費用(資格取得費など)年間$5,250まで非課税

・社員の子供への保育料、年間$5,000まで非課税

・株式配当は非課税、現金配当は課税

・地方債の利息は非課税、政府債や社債など地方債以外の利息は課税、ただし条件を満たしたシリーズEE債券の利息は非課税

・学習関連に充てられる奨学金は非課税

・賃借人の物件改良、賃貸人には関係ないので賃貸人にとっては非課税

・賃貸人の課税収入は家賃に関連する収入